あとがきとかメモとか諸々。
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ACL:シーラとボビー
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ふっと目の前を何かがよぎった。
それは本当にほんの一瞬のことだったので、その何かが人の手だと気付いたのは、傍らにいた彼の言葉をきいてからだった。
「何?」
視線だけを相手に向けると、彼は苦笑した。
「葉屑が」
「そう」
「絡まってる」
じっとして。
と言って立ち上がると、彼は彼女の正面に屈み、丁寧にその髪に絡んだ葉屑を取り除いていった。
晩秋の陽は早い。少し陰ったかと思うと直ぐにすとんと落ちる。
日が暮れる直前――傾きかけたこの一瞬がとても好きだった。
北風に舞いあげられた黄と赤の落ち葉が、陽光を反射してきらきらと黄金色に輝く。
その合間に見えた秋の空は透き通った青で、どこまでも高い。
「風が出てきたわね」
今は陽向のこの場所も直に冷えてくるだろう。
「寒い?」
とれた。と言い終わると、続けて彼はそういった。
葉屑を払った手を所在なさげにして、結局は彼女の髪をもとの通りに整えて、コートの後ろに流した。
ふれればいいのに。
そう思う。
今更、そんなことくらいでどうにかなるほど若くはない。
取って食いやしないわよ。
と、内心で毒づいた。
もっとも、そういったところで、彼から触れてこないことは解りきっている。
「――そうね。そろそろ帰ろっか」
言って彼女は立ち上がると、彼の手を取った。
END
女王様と下僕(←タイトル・ウソ)
最終的に色々踏ん切りがつかないのはボビー、だったら笑えるなあということで。
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