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ACL:グレッグとコニー。




 *****

 休憩、といわれて思ったのは、そんなことを言われたって困るということだ。
 この状況で中断されたらかえって疲れる。
 一度下がってしまったテンションとモチベーションをもう一度上げるのは想像以上に難しいというのに。
 恐らく、それはこの場にいる全員が感じていることだろう。
 皆、身体を冷やさないようにしながら、集中力を途切れさせないようにしている、きっと。そのやり方はひとそれぞれで、黙々と柔軟をしている者もいれば、知り合い同士会話をしている者もいる(談笑とは程遠い雰囲気だが)。
 もっとも、困惑以上に思ったこともあるわけで――
 「はい、どうぞ」
 唐突に、視界の下から紙コップが出てきて、グレッグはおもいきり不審な表情をした。
 「ねえ、ちょっと。いくらあたしが小さいからって一々見下ろさないでくれる?結構傷付くんだけど」
 「ああ、ごめん……ちょっと、考え事してて――驚いた」
 「あ、そ」
 「で、コニー?これは?」
 「紙コップと水」
 見ればわかるでしょ?
 と、さも当然のように彼女は言った。
 「いや、それは――うん。見ればわかるけど」
 「そこに『御自由にどうぞ』って置いてあったの。珍しいわよね、こんなの。お金有り余ってるのかしら」
 「そうだね……」
 「で?いらないならあたしが貰うわよ?」
 「いただきます。ありがとう」
 「いいえー。どういたしまして」
 そういって微笑うと、コニーは彼の隣に並ぶように壁に背をあずけた。
 かなしいかな、そうしてしまうと、彼からは彼女の頭頂部しか見えない。
 とはいえ、それを彼女に言うと、また怒られそうなので、彼は敢えてそれを口には出さなかった。
 喉下まででかかった言葉を飲み込むように、グレッグは手にした紙コップに口を付ける。
 「――……あたし、あんたが男で良かったなって思ってる」
 何故?
 と、問うように、グレッグは彼女に視線を向ける。
 それを知ってか、知らずか、コニーは先を続けた。
 「今回って、男4人、女4人でしょ?採るの。他でもそうだけど――男と女の採用枠って絶対かぶらないじゃない。だから、あたしはあんたのことを誰よりも応援できるし、あんたが受かったら心から『おめでとう』っていえるもの」
 気遣わなくて楽なのよね。
 そう言う彼女の顔は彼からは全く見えなかったけれど、あの時と同じような表情をしているのだろう、きっと。
 『ラリー、座っちゃダメ?』
 本人は否定するかもしれないが、他人を気にかけたときの彼女の声は――表情は、とてもやさしい。
 あの時、
 ――ほっとしたんだ。
 好き好んで、他人の心の中に土足で踏みこむようなことがしたいわけではないけれど。
 どこか引き返せない、そんな気がしていた。
 多分、誰もが。
 彼女がああ言わなければどうなっていたか。
 それはあまり考えたくない。
 やはり彼女にはかなわない――毎度のことだが、そう思う。
 そうだね。と、グレッグは呟いた。
 「僕もコニーが女で良かったと思ってるよ」
 「どうして?」
 「男だったら惚れてるだろうから」










END




人妻とゲイその……いくつだ?3くらい?
ACLはオチをつけるのが難しいです。




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