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あとがきとかメモとか諸々。
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BB:羽根叩きと燭台

エロではありませんが下品で下劣です。
BBのイメーシ壊したくないー!って方は回れ右推奨。
何があっても笑って許せる心の広い大人の淑女のみどうぞー。




 *****

 「バベット!――バベット!」
 階段の上から彼女を呼ぶ声がふってきた。
 彼女――バベットはその声に足を止め(といえるのかは甚だ疑問だが、移動をすることを止めた。とりあえず)、たった今降りてきたばかりの階上を見上げる。
 その声の主の顔を認めると(もっとも、そんなものは顔を視ずともわかっていたが)、バベットはその名前を呼んだ。
 「ルミエール」
 彼が階段を降りてくるのを待つと、バベットは再び口を開いた。
 「なあに?何の御用かしら?」
 「すまないが、ここにあるものを用意してくれ。大至急」
 「大至急?」
 城の中はついこの間から急に慌ただしくなった。十年ぶりに人を迎え入れたために、やることが沢山ある。
 活気があるのは良いことだろう。少なくとも、今までのように何もすることがないよりはずっといい。
 漫然と、ただ時間が過ぎていくのを待つことにはうんざりだ。
 「忙しそうね?」
 「私だけじゃないさ」
 「凄く、楽しそう」
 「まあ、それは」
 「いいことだわ」
 「君にとっても」
 「疲れてない?大丈夫?」
 「生憎、疲れることのない身体なもんで」
 言ってしまってから、そういえばそうだったと思い出す。
 それでも、もう“しまった”とは思わない。
 「――……もうすぐよ」
 「きっと」
 バベットはふわりと微笑みを返すと、手元のメモに目を通した。
 そこには

 綿布 一枚 身頃のとれる大きいもの
 他布(適当に。普段使いができそうなもの) 同上
 絹布 小ぶりで可
 ボタン
 レース
 リボン
 紐
 針
 糸
 はさみ

 と走り書きがしてある。
 「――……お裁縫でもするの?」
 「そう」
 「あなたが?」
 「まさか。ベルだよ」
 「あの娘が?」
 趣味が裁縫――というようには見えなかった。窓辺で針刺繍をしたり、レースを編むより、図書館で本を読んでいる姿のほうが様になるような娘だ、あの娘は。
 「繕いものでもするのかしら?いってくれれば、それくらい私達がするのに」
 「いや、違う」
 「どういうこと?」
 「着替えが、必要だろう?」
 着替え。
 至極当然な発想だ。
 人間には衣類が必要で、着の身着のままでいるわけにはいかない、当然。
 特に年頃の女性だ。
 いつだって自分の身は清潔に、そして綺麗にしておきたいに決まっている。
 着飾ることは望まなくても、それなりにそれなりの姿でいたいはずだ。
 「そっか……そうよね」
 彼女が文字通りその身一つでここまでやってきたことを忘れていた。
 「とりあえず普通のドレスやら何やらはみんなのを借りるにしても、だ。限度があるだろう?」
 「そうね……」
 普段着や夜会服は何とかなったとしても、下着や肌着、寝間着まで他人のものを借りようとは思わない。否、思えない。
 今はお天気の良い日が続いているが、お日様が隠れたり、冬になれば、今使ってるものを洗っても直ぐに乾く保証はない。
 「だから、自分で作るってさ」
 「そう」
 「『作らせようか?』っていったんだけどね――」
 「……」
 そんなことを訊いたのか、この男は。
 相変わらず女心に聡いのか疎いのかよくわからない(阿呆であることには違いないだろうが)。
 彼女の判断は賢明だ。
 誰だって他人にぱんつを作ってくださいなんて頼みたくない。まして、作ったぱんつを「はい、どうぞ!」と差し出されてはけるわけがない。
 それに、彼女は落ち着いている。この状況でぱんつの状況判断も的確だし、環境適応力も高そうだ。
 何より、根性がある。
 バベットは、まだよくわからないが、彼女のことがほんの少しだけ好きになった。
 「まあ……じゃあ、とにかく、ここにあるのを用意すればいいのね」
 「ああ、悪いが、よろしく頼むよ」
 バベットは再びそのメモに視線を落とす。
 綿布、適当な布――
 「――絹?レース?リボン?紐?」
 どれも装飾用だろうか。
 普段使いにする服とは相容れない素材だ。
 彼女の性格からすれば、これらを欲するとは考え難い。
 「ねえ、これは何に使うのかしら?お洒落用?」
 「ああ、それは私が勝手にいれた」
 「?」
 バベットは片眉を上げて問い返す。ルミエールはさも当然とでもいわんかのごとく、答えた。

 「勝負ぱんつが必要かなと思って」

 「いや、いくらとりあえずの間に合わせといえどもただの綿布を合わせただけじゃ味気ないだろう?それに女性は履き心地というものに拘るというし。私にいわせれば、例え下着といえども良いにこしたことはないっていうか、むしろそこが重要というか。明かりを消してしまえば関係ないとかいうのは絶対に嘘だね。つけてりゃいいってもんじゃないだろ?大体――……」
 その後も何だか色々と延々彼は喋っていた気がするが、よくは覚えていない。
 馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、こんなに馬鹿だとは思わなかった。
 朧気ながら、そんなことを考えていた。
 「――あ、ねえ、バベットは?」
 「え?」
 「だから、バベットは何が良いかって」
 「――……ええと」
 しばらく記憶がとんでいるのでついていけない。
 “困ったときには問い返し”
 の鉄則で、バベットは訊き返した。
 「私?私の好みでいいの?なら、紐は歓迎しないな」
 「紐?」
 「そう。見た目は確かに可愛らしいんだけどね。どうもこう……脱がしてる感じがしなくて」
 紐。見た目。可愛らしさ。
 いまいち話が噛み合わない。
 「強いていえば、薄手の絹にサイドと縁がレースかなあ。いや、君が紐派ならそれはそれで構わないんだ。それこそ見た目は重要だし。大体、君だったら何でも似合うと思う。ああ、そうだ、色も大切だよね……って関係ないか。君の肌の色なら、何色でも映える」
 「――……ごめんなさい、ルミエール。何の話だったかしら?」
 「え?」
 ルミエールは「いやだなあ、疲れてるのは君じゃないか」と笑った。
 本当にその通りかもしれない。
 今し方話していたことの内容を忘れるなんて、どうかしている。

 「ぱんつの好みの話だよ」

 俺は白がいいな。
 と、ほざくその顔をバベットは力一杯叩いた。
 ぐーで殴らなかったことが、せめてものやさしさかもしれない。











end






この時代に今でいう下着(ぱんつ)は存在してないんですが……まあ、いいか。
一か所だけ劇中ルミエールの一人称が「俺」なのが笑える、ということがいいたくて書きはじめた気がします。


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