あとがきとかメモとか諸々。
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猫:ランパスキャットとジェミマとシラバブ(+@)
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ランパスキャットが居間の扉を開けると、目の前にはバスケットがあった。
人間が一抱えするくらいの大きさのバスケットはブランケットを被って、でんっ!と、ランパスキャットの通り道を塞いでいる。
大方、掃除のときに横にどけて、そのままになっているのだろう。
バスケットを避けてとおる、なんていうしおらしい選択肢はランパスキャットの頭の中には存在しない。
自分の通り道を塞ぐ邪魔なものは蹴散らして――もとい、退かして進むのがランパスキャットという猫だ。
と、いうわけで、ランパスキャットはそのバスケットをどけようと前足をかけた。
瞬間、バスケットがもぞもぞと動く。
「!?」
内心、かなり驚いたのだが、ランパスキャットはそんなことは微塵も態度には出さず、前足を離して、もぞもぞゆらゆらと動くバスケットを見守った。
そして、もう一度、前足をバスケットにかける。
ランパスキャットは表情一つ変えずに、バスケットの上に被さっていたブランケットをはねのけた。
「ちょっと!寒いじゃない!かえしてよ!」
「さむいー!」
バスケットをのぞき込むと、そこにはジェミマとシラバブが文字通り、詰まっていた。
ブランケットを取られたことが気に入らないからか、はたまた寒さからか、ジェミマもシラバブも不満げだ。口を尖らせ、しきりに文句を言ってくる。
「……おまえら、何をしてるんだ?」
「別に」
「さむいんだもん」
「…………随分楽しそうだが?」
「楽しくなんかないってば」
「だって、さむいんだもん」
「………………一体、何がかなしくてこんなちんけな籠に二人して詰まらなきゃならない?」
「だ・か・ら、寒いんだってば!」
「さむいの!」
いまひとつよくわからない。
「そんなに寒いなら、炬燵にでも入ればいいだろう?」
「おこたはもうないんだよ」
「マンカスがしまっちゃったの」
「しまう?こんなに早く?」
まだ冬ははじまったばかりだ。
炬燵が本格的に大活躍するようになるのは、むしろこれからだろうに。
「なんかねー、炬燵の中の赤い光が目に悪いんだって」
「あかいひかりをみると、めがみえなくなっちゃうんだよ」
「だから、仕方ないじゃない。ね?」
「どこがどう仕方ないんだかよくわからないんだが……」
そもそも、炬燵は頭から突っ込むところではないわけで。
顔を出して遠赤外線を見ないようにする、という選択肢はこの二人にはないらしい。
「カーペットの上にバスケットを置いて中に入ってブランケットにくるまればあったかいと思うの」
「ふたりだとすごくあったかいよ」
「…………ああ、そうかい」
ランパスキャットは呆れたように嘆息すると、前足にひっかけたままになっていたブランケットを「ていっ」と放った。
「ああー!!何すんのよ!?」
「ひどいー!」
「ちょっと!取ってきてよ!」
「さむいよー」
「ほざくな、ガキ共」
ランパスキャットはぴしゃりと言った。
「生意気いうんじゃない。そんなぬくぬくとしあわせそうに過ごそうなんざ20年早いんだよ。ガキはガキらしく外行って遊んでこい。そこの庭を10分も走り回ったら、すぐにあったかくな……おい、おまえら、何をしてる?」
ジェミマとシラバブはランパスキャットの話を欠片も聞いちゃいないようで、二人してなんとかランパスキャットを動かそうと、バスケットの中から懸命に引っ張っている。
「ブランケットがないならランパスで我慢しようと思って」
「もうふのかわりね」
「考えたら、天然毛皮だもんね。ブランケットよりあったかいわ、きっと」
「うん。あったかいよ」
「ま・て」
という、ランパスキャットの非難じみた言葉が二人に届くはずもなく。
必死の抵抗むなしく、ほどなくランパスキャットは見事にバスケットの中へと引きずりこまれた。
「――おや?」
我らがリーダーことマンカストラップ(激鈍)は、居間に入ると、こう言った。
「てんこ盛りだな。なんだか楽しそうだな」
誰のせいでこうなった!!
怒鳴りつけたいのをなんとかこらえ、「…………おまえ、ちょっと、これ、代われ」と、ランパスキャットは呻いた。
END
ちょっとまえにはやった(?)猫鍋を久しぶりにみたら、つい……。
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