あとがきとかメモとか諸々。
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CFY:フォーダー夫妻
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「素敵な式だったわね」
と、帰る道すがら彼女はいった。
「そうだね」と、彼が返すと、彼女は間をおかずに口を開く。
「色々あったけどよかったと思うの。ええと、ああ、そう――あの、」
「“終わりよければすべてよし”?」
「そうそう。それ。なんか、そばでみててすごく大変で、かわいそうだなって思うときもたくさんあったけど。今日のあのこ、すごくしあわせそうだったもの。ねえ、知ってる?しあわせって伝染するんですって」
一般的に、伝染するといわれているのは恋だ。
と、彼が伝えると、彼女は何かを考えるようにほんの少しだけ首を傾げた。
「でも、しあわせが伝染しちゃいけないわけじゃないし」
「それはまあそうだけど」
「じゃあ、しあわせ“も”伝染する。それでいいじゃない」
「また勝手なことを、」
「いいの。私が、今、決めたの。だって、そう考えた方がなんか良いじゃない?」
「別に悪いとはいわないけどね」
「でしょう?」
「どこをどうやったらそういう突拍子もない考えがでてくるんだか知りたい」
「そんなに突拍子なくなんかないわよ」
「いや、そう思ってるのは多分君だけ」
「だって、しあわせそうなひとみると、なんか『よかったわねー』って、こっちもうれしくならない?」
「なんて単純な……」
「そう?」
「羨ましい、とか思わないの?」
「なんで?」
「なんで?って、」
「羨ましがったって仕方ないじゃない?そのひとになれるわけじゃないんだし」
「――」
「だったら、そんなことより、まわりのひとにはしあわせでいてほしいわ。ユージーンは?」
「いや、まあ」
「私は、ユージーンにはしあわせでいてほしいし、ユージーンがしあわせだと私はうれしい。すごくしあわせだなって思うけど?」
頼むから他の男の前ではいってくれるな。
と思いながら、彼は曖昧に肯いた。
「――……君の、式のときの写真は、向こうに置いてきてしまったね」
こんなに長期滞在する予定はなかったから、写真に限らず、殆どのものは故郷に置いてきてしまった。
「今度送ってもらおうか?」
「着く頃にはなんで送ってもらおうと思ったかなんて忘れてるわよ」
そういって彼女は笑うと、ほんの少しだけ彼との間を詰め、手をのばす。
「ちゃんと、覚えてるもの。大丈夫よ。帰ったらゆっくりみましょう?」
「っていうのも、帰ったら忘れているかもよ?」
「なら別にかまわないわよ。忘れるくらいそのときがしあわせってことでしょう?」
それに、と彼女は続ける。
「写真よりもホンモノのほうがいいもの」
ああ、やっぱりこのひとにはかなわない。
彼は内心で苦笑し、その手をとった。
END
ロンドン公演で抹消されてる旦那が不憫すぎる件について(笑)。
カッとなってやった。反省はしていない。
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