あとがきとかメモとか諸々。
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GH:ジョンと真砂子
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昼下がりの街はせわしない。
通りを行き交う人々は皆何かに急いでいるようで、人の流れが慌ただしく交差する。
それでもどこか人々が楽しそうに見えるのは、世間が夏休みだからなのかもしれない。
社会人には夏休みなんて関係のないことだけれど、やはりこの時期はどこか特別なのだろう。
ジョン・ブラウンはぼんやりと窓の外を眺めながら、そんなことを考えていた。
通りのそんな様子とは反対に、彼が今居る場所は落ち着いている。
大通りに面した喫茶店は、外の騒ぎなどなんのそのといった体で静かにスタンダードのピアノナンバーをBGMに流している。外は強い日差しとアスファルトの照り返しでうだるような暑さだが、店内は空中が効いていて涼しげで――まるで、そこだけ別世界のようだ。
カラン、と音を立ててアイスコーヒーの氷が割れた。
グラスの珈琲は半分程となったが、待ち人はまだ現れない。
待ち合わせ時間まではあと10分と少しあるので、まあ、別に問題はないだろう。
しかし、相手の普段の行動を考えれば、そろそろやってきてもいい頃合だ。
ふと、唐突にテーブルの上に出していた携帯電話のLEDが着信を示す淡いブルーに点滅した。
通話ボタンを押して応じると、機械の向こう側から『――もしもし、ブラウンさん?』とか細い声が聞こえてくる。何かをはばかるような、小さな声だ。
声の調子でジョンは“何かあったな”と察した。
「こんにちは。どうかしましたか?」
『――すみません、撮影が思ったよりも長引いてしまって……』
予定の時間になってもまだ終わらないどころか、未だに終わる気配がないという。
恐らく、休憩時間にこっそりとかけているのだろう。
『申し訳ありません。今日はいつ行けるかわかりませんので、また次の機会に……』
「さいですね。わかりました」
『本当にごめんなさい』
「いいえ。原さんのせいやないですから。お仕事、頑張ってください」
尚も謝る彼女に苦笑し、それから、二言、三言他愛もない会話を交わして、電話を切った。
店内では丁度曲が変わり、新たなメロディーが流れ出す。
それは穏やかでやさしく、けれども、どこか寂しげだった。
END
なんとなくいつも神父がおいしい役回りなので損をさせてみた(笑)。
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