あとがきとかメモとか諸々。
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ACL:グレッグとコニー。
これもやっぱり続いてるかんじで。
*****
「どうして、ここに?」
「鍵開いてたからに決まってんでしょ」
「そうじゃなくて……え?鍵、開いてた?」
と、訊くと、彼女はふんと胸を反らした。
「そうよ。開いてたの、鍵」
いわれてみれば、昨夜部屋に戻った際に鍵をかけた記憶がない(というより、戻ってきてからこっちの記憶がないといったほうが正しいのだが)。
不用心にも程がある。
と、彼女は再び怒りはじめた。
「あんた、ここをどこだと思ってるの?ニューヨークなめてんじゃないわよ?ここは、あんたが育った高級住宅街じゃないの。ダウンタウンで鍵開けっ放しにしてたら不法侵入してくださいっていってるようなもんじゃない。押しかけて来た相手にいきなりズドン!ってやられてもおかしくないんだから!」
「それは、まあ、そうなんだけど……」
「そうよ。部屋入ったら冷たい死体が血塗れで転がってましたー、なんて展開、嫌よ、あたし」
それはそれ。これはこれ。
特別死にたいわけではないが、そうなったら仕方がない。
それが、この街で生きるということだ。
そういおうと思ったが、いえば、彼女が益々怒りだすだろうということは明らかなので止めておいた。
代わりに、曖昧に笑って、「ごめん」というと、
彼女は満足そうに頷いた。
「それで?どうしてここに?」
「え?」
「鍵が開いていたから君がはいってきたのはわかったけどね、コニー?そもそも何の用で来たのさ?」
彼女はやっと得心がいったというように、パチン!と手を打った。
「そーよ!肝心なこと忘れるところだったじゃない!」
「忘れるくらいの用事ですか……」
「連絡」
彼女は低くいった。
「あんたと、連絡つかないって――誰も……心配してた」
「――」
「あたしだって、いきなり来たわけじゃないの。何度か電話だってしてみたのよ。でも、全然繋がらないし……」
「そう」
「それだけ?」
「仕事場まで来てくれればよかったのに」
「あんたが今何に出てるのかなんて知らないわよ。あたしたちみたいな人間の名前まで載っけてくれるほど、ポスターは親切じゃないの。ブロードウェイの劇場全部を虱潰しに探せって?冗談じゃないわ。オン、オフ併せていくつあると思ってんのよ」
「……ひと月やふた月、連絡がとれないなんてよくあることじゃないか」
定時に出勤して、定時に帰宅ができるような仕事ではないのだから。
家にいる時間なんて、自分でも正確にはいえないし。そもそも、遠方の仕事となれば月単位で家を空けることだって珍しくない。
「そうね。よくあることね。でも、あたしは心配した」
「子供じゃあるまいし」
「自分の許容量が管理できなくて、現在半死人の子供は誰かしらね?」
「――……すみません」
「本当に。来てよかったわよ」
入ったら血塗れ死体が転がっているということは流石にありえないだろうと思っていたが、入ったら腐乱死体が転がっているかもしれない、くらいのことは覚悟していた。
と、彼女は言った。
あまりにもサラッと笑いながら言われたので、冗談なのか本気なのかわからない。
「コニー。ひとのことをなんだと?」
「ガキ」
身も蓋もない。
「『何かあったの?』なんて訊かないわよ」
「普通、そこは訊いてくれるところなんじゃないのかな?」
「訊いてもどうせこたえないくせに。よくいうわよ」
「――……うん」
「まあ、あんたが元気ならそれでいいのよ」
と、彼女は笑った。
* * *
アメリカをみる目は偏見に満ち溢れているようです、私。
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